東京と神奈川を中心に100店舗以上を展開する焼肉チェーン店・七輪焼肉 安安(あんあん)が、2月14日から3月30日まで沖縄を除く全店舗で「YouTuber応援キャンペーン」を開催している。

 キャンペーン利用条件は、“YouTuberの証明”として自分のチャンネル登録者数が100人以上であることがわかる画面を店員に提示すること。たったこれだけで、通常は3000円以上の焼肉食べ放題(DXコース90分、70分でラストオーダー)が、税込み1000円ポッキリで堪能できてしまうというから驚きだ。

 平日限定でドリンクは別料金といった制限はあるが、YouTuber本人以外にも5名まで一緒に1000円/1名で食べ放題を利用できる。仲間たちと焼肉を豪勢に楽しむという体験は、YouTuberにとって動画制作のネタになることだろう。

 もちろん、安安側とすれば、ただ焼肉を格安で振る舞って終わりではなく、「YouTuberに宣伝してもらいたい」という狙いがあるのだろう。しかし、「食べ放題の様子を動画撮影して公開しなければいけない」などといった条件はないため、“YouTuberの証明”さえクリアすれば1000円で食べ放題を利用できる。ある意味で、気前の良いキャンペーンとなっているのだ。

 そこで、今回のキャンペーンを実施した背景について、安安の運営元である富士達の松本氏に話を聞いた。

●赤字覚悟でYouTuberを後押しの狙い

「今回のキャンペーンは、正直に言ってしまえば売り上げ的には大赤字です。ただ、『販売促進で何か仕掛けたい』と考えた際に『夢をハングリーに追いかけている若者のみなさんを応援しよう』というコンセプトで始まった企画ですから、赤字も覚悟の上です」(松本氏)

 また、前述したように食べ放題の利用に関しては「動画を撮影して公開しなければいけない」といった条件はないが、キャンペーンの一環として、タイトルに「焼肉安安」と入れた動画を「YouTube」に投稿した利用者のなかから抽選で3名にビデオカメラ「GoPro HERO6 BLACK」をプレゼントするという。

「この商品は5万円程度で市販されており、そういう意味では特別に高価というわけではございません。ただ、YouTuberの方々は『将来、本当に職業としてやっていけるのか』と不安でしょうし、思い切ってビデオカメラを買うべきかどうかも悩んでしまうと思います。

 YouTuberを始めた頃はスマートフォンでしか動画を撮れないことも多いと思いますので、そういう方々を後押しする意味でも、このような景品をご用意いたしました。ちなみに、動画の撮影場所は店舗内でなくても、たとえば自宅などで撮影したものでも投稿OKです」(同)

●多発する炎上騒動への対策は?

 夢を持つYouTuberと、それを応援する焼肉店という構図は一見美しいが、最近のYouTuberを語る上で避けて通れないのは“炎上”という問題だ。記憶に新しいところでは、昨年、大手ファミリーレストランチェーンのサイゼリヤで全メニューを注文し大量に食べ残してしまったYouTuberが非難を浴びた。

 安安のキャンペーンにおいても、注目を浴びようとするあまり非常識な行動に走ってしまうYouTuberが現れる可能性は否定できないが、このあたりのリスク管理についてはどうとらえているのだろうか。

「過度な食べ残しに関しては追加料金をいただく場合もございますし、店舗内での動画撮影につきましても、ほかのお客様が映り込まないようなご配慮をお願いするなど、注意喚起をさせていただいております」(同)

 そう語る松本氏は、キャンペーンの利用者たちが実際に「YouTube」に投稿した動画を逐一チェックしているという。

「2月23日時点で『YouTube』には130本以上の関連動画が投稿されており、反響はかなり大きいと感じております。なかには『地元に安安がない』ということで、静岡から神奈川の店舗にわざわざ来ていただいた方もいらっしゃいました。往復240kmの道のりをクルマで走ってきたそうで、『そんなに遠くから足を運んでいただけているんだな』と感慨深かったですね。

 今回のキャンペーンの対象となっているDXコースはグランドメニュー内のフードがすべて食べ放題ですから、YouTuberの方々にはおいしいお肉をいろいろと召し上がっていただき、動画内で感想を紹介していただければ幸いです」(同)

●「チャンネル登録100人以上」の深い意味

 今回のキャンペーンは「チャンネル登録者数100人以上」という条件を満たす必要があるが、この「100人」という数字はどのような基準で設定したのだろうか。

「『水溜りボンド』さんという2人組YouTuberの事例を参考にしています。水溜りボンドさんはチャンネル登録者数250万人以上(※2月下旬時点)で、YouTuberとしてはかなり有名だと思うのですが、動画の投稿を始めてからチャンネル登録者数100人に届くまでは、だいたい1カ月かかったようです。

 今回のキャンペーンは2月14日にスタートし、3月30日まで継続します。つまり、『チャンネル登録者数100人』という“YouTuberの証明”は、『YouTuberになりたての方でも、がんばれば期間内に達成できるだろう』という理由で、基準の数値として設けさせていただきました。

 余談ですが、当の水溜りボンドさんたちも安安に来店した動画を『YouTube』にアップロードしてくださっており、非常に驚き感動したものです」(同)

 ちなみに「YouTube」では、動画の投稿者が収益を得るための「パートナープログラム」の資格要件を「チャンネル登録者数が1000人」かつ「チャンネルの過去12カ月間の総再生時間が4000時間」と定めている。こちらに比べれば、安安のYouTuber認定基準はかなりハードルが低いといえるだろう。

●“YouTube映え”するメニューはサラダ?

 最後に、安安で動画を撮影するにあたって、“インスタ映え”ならぬ“YouTube映え”するようなイチオシメニューはないか聞いてみた。

「意外に思われるかもしれませんが、サイドメニューのサラダでしょうか。安安のサラダは一人前でも相当な量がありますので、『今回の食べ放題キャンペーンの魅力は値段の安さだけではない』という部分を、きっと感じていただけるはずです。

 実は、安安が特定の方々だけに向けた割引キャンペーンを導入したのは、これが初めてでした。今回はYouTuber限定でしたが、今後も何かおもしろいことを企画していきたいと考えています」(同)

 YouTuberとお店の双方の良心によって成り立っていることが感じられる、今回のキャンペーン。ユニークな試みのゆくえに注目したい。
(文=A4studio)

「YouTuber応援キャンペーン | 七輪焼肉安安」より